2000 年 61 巻 12 号 p. 3223-3226
当院で3例の下咽頭癌咽頭喉頭頸部食道全摘出例に対し,エンドステープラーを用いて遊離空腸に二重折りパウチ加工を加え再建を行った.全例生着し,再建に基づく合併症は見なかった.遊離空腸は,粘膜の連続性を保てると言う組織学的な優位性に加え,微小血管吻合技術の普及した現在,血行再建が安全確実に行えるようになり,再建組織として第一選択とされる状況にある.しかし,嚥下運動の第2相が損なわれてしまう咽頭喉頭全摘出においては,再建組織はもっぱら重力によって通過する食物塊の流路導管となるのみであり,機能的再建に到っていない現状では,再建時のデザインの工夫の余地が残されていると考えられる.ステッキ状の端側吻合による再建が一般的だが,今回筆者らは,再建操作を担当するにあたり,簡便に二重折り加工を行い,概念的には大きな口径差のある欠損部分を直線的な端々吻合として再建できるように術式を工夫したので,報告する.