日本臨床外科学会雑誌
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潜在性乳癌の1例
敷島 裕之長 靖金子 行宏本原 敏司塚田 守雄加藤 紘之
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2000 年 61 巻 3 号 p. 640-643

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抄録

症例は54歳の女性,左腋窩腫瘤を主訴に当科を受診,摘出生検にて腺癌のリンパ節転移の診断を受けた.第一に乳腺からの転移を疑ったが,臨床上,両側乳房とも異常は認めなかった.しかし腋窩リンパ節転移の免疫染色でラクトアルブミンが陽性であり,また他臓器原発巣が発見されないことから,潜在性乳癌と考え,左胸筋温存乳房切除(lt-Bt-Ax-Ic)を施行した.切除乳腺を病理組織学的に詳細に検索したが悪性病変は認められなかった.その後2年を経過して左内胸リンパ節に転移巣が出現し,放射線治療,化学療法を施行した結果,術後3年を経た現在,健在である.潜在性乳癌の診断上,リンパ節の免疫染色は有力な情報を提供し得るものと思われれた.

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