日本臨床外科学会雑誌
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急性腹症にて発症した腎細胞癌術後16年目の膵転移の1例
柳父 宣治佐藤 友信
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2000 年 61 巻 3 号 p. 775-778

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抄録

症例は83歳,男性. 67歳時に腎細胞癌にて右腎摘出術を受けており, 80歳時に肺転移を診断されている.血液検査で貧血を認め,腹部超音波検査で膵尾部に直径7cm大の腫瘍を認めたため精査した.腎細胞癌の膵転移による腹腔内出血と診断し,膵体尾部切除と脾摘出術を施行した.腫瘍は膵と薄い結合組織を介して接し,膵の被膜内に存在していた.本邦34例の集計では腎摘出後の膵転移までの期間は平均9.1年であり,腎細胞癌は異時性再発までの時間が比較的長いのが特徴である.腎細胞癌の術後は長期にわたる経過観察が重要であり,転移性膵腫瘍に対しては孤立性の場合はもちろん他臓器転移を認めてもslow growingである場合は手術療法の適応となりうると考えられる.

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