日本臨床外科学会雑誌
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結腸膀胱瘻を合併したS状結腸癌の1例
山中 幸二臼井 隆曳田 知紀
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キーワード: 結腸膀胱瘻, S状結腸癌
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2000 年 61 巻 4 号 p. 1013-1017

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抄録

症例は54歳男性,気尿,糞尿,下痢と発熱にて受診し,膀胱瘻の精査と治療のため入院となった.軽度の下腹部痛を訴え,腹部CTでは著明な結腸壁と膀胱壁の腫脹があり,その周囲に炎症所見を伴っていた.注腸,膀胱造影では,瘻孔は描出せず,大腸内視鏡を用いての瘻孔造影にて瘻孔が描出された.大腸内視鏡では瘻孔部の狭窄のため,その奥にある結腸癌は確認できず,瘻孔形成の原因として大腸憩室炎を疑った.手術時に瘻孔部の結腸に腫瘍が触知されS字状結腸癌であることがわかった.結腸と膀胱は強く癒着していたが,剥離は可能であった,手術は, S字状結腸切除と膀胱部分切除を行った.癌部の肛門側の近傍に瘻孔開口部がみられ,病理組織検査で瘻孔開口部まで癌浸潤がみられるのだが,瘻孔壁には著明な炎症細胞浸潤がみられた.従来考えられてきた膀胱に直接浸潤した癌の潰瘍中心部からの瘻孔形成ではなく,結腸癌の近傍にあったS状結腸憩室炎による膀胱瘻の合併を否定できないと思われた.

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