2000 年 61 巻 4 号 p. 1018-1021
直腸脱は高齢者に好発することから,非侵襲的な術式が選択されることが多いが,若年者に対する術式については,一定の見解はない.今回,若年者完全直腸脱に対し,前方切除・仙骨固定術を行い,良好な結果を得たので報告する.症例は22歳,男性. 3年前より直腸の肛門外脱出を認めたが,自分で用手的に還納していた.今回,約6cmの直腸の肛門外脱出を自分で還納できなくなり,当科に入院.入院後の画像診断で,下部直腸の著明な拡張・直腸壁の肥厚・ Douglas窩の異常低位を認めた.開腹時,口側直腸が肛門側にきわめて容易に重積する状態であり,前方切除(側端吻合)・仙骨固定術を行った.術後経過は良好で,術後合併症なく,術後2年の現在,再発の兆候は認めていない.本術式は直腸脱の成因からみて最も根治的な術式であり,若年者完全直腸脱の術式として選択肢の一つとして考慮してもよいと考えられる.