症例は58歳の男性.主訴は粘血便.他院の大腸鏡検査により直腸悪性リンパ腫を指摘され,当院に紹介入院となった.術前精査で他臓器病変はなくNaqviの病期分類でStage IIを疑い,化学療法前に手術を施行することになった.
手術は,膀胱機能を考慮し,直腸癌の手術に準じた腹会陰式直腸切断術,上方D3・側方D2郭清を施行した.病変は11.2×11.0×3.0cm大の2型様であり,近接臓器への浸潤は認めなかった.病理組織所見はa1で,上方n3側方n2であった.術後30日目にCHOP療法を開始し2クール施行したが,効果を認めず術後80日目に会陰部に再発を認め,腹膜播種が進行し術後140日目に死亡した.
今回の症例を経験して,化学療法の効果の有無が予後を左右する因子ではないかと思われた.また,全身的化学療法の効果が無いと判断したとき,動注化学療法や放射線療法も考慮すべきと反省させられた.