2000 年 61 巻 4 号 p. 1035-1039
肝動脈TAEと肝動注の併用後に切除し組織学的に完全壊死を確認した直腸癌多発性肝転移の1例を報告する.症例は62歳女性.直腸癌で高位前方切除術を施行も,術後3ヵ月にて肝右葉に2個の転移巣が出現した. ADR30mg, MMC10mgおよびLipiodol 5mlにて肝動脈TAEを施行,その後リザーバーを留置し間歌的動注療法を施行した (5-Fu 2,000mg/m2/48hrs qwを4回, 5-Fu 1,000mg/m2/5hrs qwを5回,さらに5-Fu 1,000mg/m2/5hrs qwにCDDP20mgを加え4回施行し,総投与量は5-Fu21.3g, CDDP80mgであった).しかしCT所見上有効な肝転移巣の縮小は得られず肝切除術を施行した.組織学的検索では肝転移巣はいずれも著明な変性壊死像を示しviableな腫瘍細胞は認めなかった.肝切除後4年10ヵ月を経過し,再発なく健在である.本症例では肝転移巣の画像上の縮小率と組織学的効果の解離が認められ,肝動注療法での効果判定の困難さが示唆された.