2000 年 61 巻 4 号 p. 877-880
MRSAによる腸腰筋膿瘍は稀な疾患である.われわれは慢性血液透析患者に発症したMRSAシャントカテーテル敗血症が原因と思われる腸腰筋膿瘍,肺化膿症を経験したので報告する.症例は41歳女性の血液透析患者.主訴は発熱および左腰部痛.入院後,骨盤,胸部CTを施行し,左腸腰筋膿瘍,肺化膿症と診断し,切開排膿ドレナージ術を施行した.入院時動脈血培養からMRSAが検出され,またドレーン排液および喀痰からも同様にMRSAが検出されたため, VCM投与を行った.ドレーン抜去後,膿の再貯留を認めたため術後8日目に再度切開排膿術を施行した.初回術後約7週で解熱,膿瘍が骨盤,胸部CT上著明に縮小し,初回術後第13週で軽快退院した. MRSAによる腸腰筋膿瘍の本邦報告例6例の内3例が死亡しており,早期にドレナージをつけ適当な薬物療法を行うことが重要であると思われた.