2000 年 61 巻 4 号 p. 890-893
症例は21歳女性で,右乳房のしこりを主訴に来院.右C領域に境界明瞭で,弾性硬な5cm大の腫瘤を触知.超音波検査で隔壁構造を有する縦横比0.31,後方エコーの増強を伴う低エコー域を認めた.エコー下の穿刺吸引細胞診はClassIIであった.腫瘤摘出術を施行し,病理組織学的に腺上皮細胞と筋上皮細胞の2つの型の腫瘍細胞が増生する腺筋上皮腫と診断された.細胞異型や核分裂像はなく,また浸潤所見もないことから追加切除はせずに経過観察とした.術後4年8ヵ月経過した現在,再発や転移を認めていない.乳腺原発の腺筋上皮腫の報告例は今だ少なく,本邦報告例は本症例を含め19例である.本症例は過去の報告例の中でも最も若年発症の1例であった.