日本臨床外科学会雑誌
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乳癌と鑑別が困難であった乳腺管状腺腫の1例
花城 徳一石川 正志西岡 将規菊辻 徹柏木 豊三木 久嗣
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2000 年 61 巻 4 号 p. 894-897

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抄録

乳腺良性疾患のうち管状腺腫は稀な疾患であり,若年女性に発生しやすい.今回われわれは乳癌と鑑別が困難であった乳腺管状腺腫の1例を経験したので報告する.症例は71歳,女性子供は3人.平成10年9月初旬より左乳房に腫瘤を触知したため当院を受診した.乳頭からの異常分泌物はなく疼痛も認められなかった.腫瘤は硬く左乳房CD領域に存在した.超音波検査上,腫瘤は2.5×2.5×2.4cm,辺縁はほぼ平滑,内部不均一であった.マンモグラフィーでは石灰化は見られないが,一部spiculaと思われる像を認めた.吸引細胞診ではclassV, adenocarcinomaであった.以上の所見より,左乳癌の診断で非定型的乳房切除術を施行した.病理組織学的診断では乳腺管状腺腫であった.吸引細胞診において管状腺腫が変性したり梗塞を起こしていると悪性と誤診されやすいため,外科的治療において臨床症状,検査等を慎重に考慮して決定するべきである.

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