2000 年 61 巻 4 号 p. 898-901
リンパ節転移を伴った男性嚢胞内乳癌を経験したので報告する.症例は70歳男性で右乳房腫瘤を主訴に来院した.右乳房に50mm大の球状可動性良好な腫瘤を触知し,超音波検査にて嚢胞内に10mm大の結節像を認めた.嚢胞内容は血性で細胞診断はclass IIIであった.摘出生検病理組織診で嚢胞内乳癌と診断し,非定型乳房切除術を施行した.組織学的診断は嚢胞内乳癌で,腋窩リンパ節に2個の転移を認めた.これまで本邦では男性嚢胞内乳癌でリンパ節転移を伴う症例は報告されておらず,リンパ節郭清を省略した十分な腫瘍の切除で満足のいく結果が期待されているが,症例によりリンパ節郭清の適応を決定する必要があると考えられた.