2000 年 61 巻 4 号 p. 963-967
症例は48歳,男性.既往歴として甲状腺癌にて甲状腺全摘術を受けている.末端肥大症の診断にて当院内科通院中黒色便を自覚し胃内視鏡検査にて異常を指摘され入院となった.胃噴門部小彎側に大きさ5×5mmの陥凹性病変が認められ,生検にて低分化腺癌の診断を得た.本人の強い希望もあり開腹下の胃部分切除術が施行された.病変は大きさ7×5mmのIIc型であり病理組織学的には一部に印環細胞癌を伴う低分化腺癌であった.末端肥大症では,成長ホルモンにより腫瘍発生が促進される可能性が示唆されている.大腸腫瘍との合併例は多く報告されているが胃癌との合併例は本邦では比較的少なかった.末端肥大症をもつ患者においては,悪性腫瘍の合併は重要な予後決定因子であり,その長期経過観察において常に留意すべき合併症であると考えられる.