日本臨床外科学会雑誌
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十二指腸stromal tumorの1例
中川 国利鈴木 幸正桃野 哲
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2000 年 61 巻 4 号 p. 972-976

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抄録

症例は65歳の男性で,全身倦怠感と貧血を主訴として来院した.低緊張性十二指腸造影検査では,十二指腸第2部に陰影欠損像を認めた.上部消化管内視鏡検査では, Vater乳頭口側に易出血性で深い潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.腹部超音波検査, CT検査, MRI検査では径5.5cm大の腫瘤を認め,選択的動脈造影では腫瘍濃染像を伴っていた.腫瘍の表面は平滑で,リンパ節転移も認めなかったため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的には紡錘形細胞が増殖し,核分裂像を400倍率10視野で6個認めた.また免疫組織化学的にSMA, desmin, NSE, S-100蛋白が共に陰性であったことから,十二指腸stromal tumorと診断した.術後4ヵ月現在,外来にて経過観察中であるが,再発所見は認めていない.しかし,腫瘍径が5.5cmと大きく,核分裂像が多いことから,悪性の可能性が高く,慎重なる経過観察が必要である.

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