日本臨床外科学会雑誌
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回腸原発悪性線維性組織球腫の1例
花岡 俊仁鈴木 栄治藤井 徹也高橋 寛敏石田 数逸三原 康生
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2000 年 61 巻 4 号 p. 986-990

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抄録

症例は45歳,女性.頭痛,動悸,全身倦怠感を主訴に受診し,高度貧血を認め精査を行った.腹部超音波, CT, MRI検査にて子宮腹側に接して径7cm程の充実性腫瘍を認め,小腸透視では明らかな狭窄や腫瘤影は指摘できなかった.開腹すると,回腸末端から70cmの回腸より管腔外性に発育した手拳大の腫瘍を認め,回腸切除術を施行した.病理組織学的に腫瘤は紡錘形細胞の密な増殖よりなり, storiform patternが明瞭に認められ,通常型の悪性線維性組織球腫と診断した.手術後3年6ヵ月を経過し,再発の徴候なく健在である.
小腸原発悪性線維性組織球腫は極めて稀な疾患で,本邦報告例は14例である.中高年者の男性に好発し,腸閉塞と出血をきたして発症する場合が多く,術前確定診断は困難である.腹膜播種,血行性転移例は予後不良であるが,リンパ節転移と周囲浸潤に対しては根治的手術により長期生存が得られる可能性があると考えられた.

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