日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
胸腺未分化癌の1例
三浦 弘之平良 修吉田 浩一加藤 治文
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 61 巻 5 号 p. 1186-1189

詳細
抄録

59歳女性で,胸腺癌摘出後27カ月無再発生存中の症例を報告した.喘息発作時の胸部X線写真で,上縦隔から右へ突出する縦隔腫瘍を指摘された.胸骨正中切開下に,腫瘍を周囲臓器より剥離し,周囲リンパ節と一塊に摘出した. 80×55mmの腫瘍でカルチノイドに類似した組織像を示したが, Glimerius染色は陰性で,電顕的にも神経内分泌顆粒は認められなかった.免疫組織学的にもChromogranin陰性で, EMA, Keratin, CEA陽性であり,胸腺未分化癌と最終診断した.被膜を越える浸潤はなく,摘出した前縦隔リンパ節の1個に転移を認めた.術後補助療法として縦隔に60Gyの放射線治療のみを施行した.
胸腺癌は,発見時に既に,周囲臓器に進展した症例が多く,完全切除が難しい.化学療法・放射線療法も確立されたものがない.カルチノイドの類似性から,化学療法は行わず,放射線療法のみ施行したが,良好な経過を得ている.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top