日本臨床外科学会雑誌
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術前診断が可能であった魚骨による腹腔内炎症性腫瘤の1例
竹元 伸之山本 宏甲斐 敏弘椎名 良直岡田 晋一郎関口 勝也宮田 道夫
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2000 年 61 巻 5 号 p. 1293-1298

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抄録

症例は69歳女性. 1997年7月3日,左下腹部痛を主訴に受診.腹部所見では同部位に径10cm大の圧痛を伴う表面平滑・弾性硬の腹部腫瘤を触知し,精査加療目的で7月14日入院.入院時検査成績では白血球数10,900/mm3, CRP2.60mg/dlと炎症所見を認めた. USでは消化管と連続した境界不明瞭なlow echoが描出され,またCTでは石灰化を伴う線状陰影を含有する腫瘤像を認めた.問診では確診は得られなかったが検査所見と合わせ,魚骨による腹腔内炎症性腫瘤を最も疑った.下部消化管造影では,横行結腸左側・S状結腸右側の両方に約5cmの壁外性圧排像を認めた.開腹所見で腫瘤は術前の画像診断の如く両結腸に挟まれて存在し,腫瘤を含めた切除を施行した.摘出腫瘤は一部膿を含み,内部に長径2.5cmの魚骨を認めた.原因不明の腹腔内腫瘤では腸管内異物の可能性も考慮し,詳細な問診や画像診断を駆使することによって,術前診断も可能であると思われた.

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