日本臨床外科学会雑誌
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自然還納を確認し鼠径法にて待機的に修復術を施行した閉鎖孔ヘルニアの1例
江田 泉矢野 匡亮田中 規幹須藤 一郎末光 浩也大塚 昭雄
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2000 年 61 巻 5 号 p. 1340-1343

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抄録
症例は81歳,女性.突然,右下腹部痛と右大腿部痛が出現し,当院を受診した.骨盤部CTにて右側の恥骨筋と内閉鎖筋との間に嵌頓した腸管を認めた.右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,緊急手術目的で入院した.ところが,入院直後に症状が消失したため,骨盤部CTを再検したところ,右側の恥骨筋と内閉鎖筋との間は拡大していたが,腸管の嵌頓は認めず,閉鎖孔ヘルニア嵌頓は自然還納されたことを確認した.手術は待機的に硬膜外麻酔下で鼠径法にて施行した.腹膜外経路にて閉鎖孔を検索し,ヘルニア嚢を切除した後, Teflon meshをCooper靱帯と内閉鎖筋に縫合固定し,ヘルニア門を被覆した.術後経過は良好で,術後第10病日に退院した.鼠径法でも手術操作に十分な視野が得られ,侵襲を最小限に抑えることができた.嵌頓していない症例および発症後早期に本症が診断され,消化管穿孔の可能性が低い症例では,鼠径法は有用であると考えられた.
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