われわれは左鼠径ヘルニアに合併した成人両側上腰ヘルニアの稀な1例を経験した.症例は85歳女性で左鼠径ヘルニア手術目的にて当院を受診,その際両側上腰ヘルニアを診断された.
腹部CTでは両側腰部の筋欠損部に低吸収性の腫瘤を認め,右側では腸管の脱出を伴っていた.
手術所見では右側の欠損部は直径1.5cm,左側は1.0cmであった.両側ともに腰部筋肉の直接縫合にて閉鎖した.
術後経過は順調で再発は認めていない.
本邦では26例の成人上腰ヘルニアが報告されており,自験例は両側例としてもまた,鼠径ヘルニア合併例としても3例目である.
