日本臨床外科学会雑誌
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重労働による腹圧の上昇が誘因と思われた小腸憩室反復穿孔の1例
今野 文博並木 健二松本 宏三井 一浩吉田 龍一桂 一憲
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2001 年 62 巻 12 号 p. 2949-2952

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抄録

患者は65歳,土木作業員の男性.突然の腹痛を主訴に受診.汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. Treitz靱帯から1.6mの空腸腸間膜対側に径5mmの小穿孔を認めた.他の腸管に異常は認めなかった.魚骨による穿孔を疑い楔状切除し縫合閉鎖した.約10カ月後,全く同様の所見で当科受診.再度,開腹術を施行した.前回穿孔部の約10cm口側に前回同様の小穿孔が存在した.約8cmの腸管を切除し端々吻合した. 2度の穿孔時の血液検査の共通点は, CPKとLDHの異常高値で,きつい肉体労働によるものと推察された.繰り返す腸穿孔であり基礎的疾患の存在を念頭に諸検査を行ったが,小腸造影にて空腸に憩室が数個存在し,憩室の穿孔と診断した.病理的にも特異性潰瘍疾患は否定され,憩室で矛盾のない所見とされた.小腸憩室は比較的稀な疾患で短期間に穿孔を繰り返した報告は渉猟されない.しかも,きつい肉体労働による腹圧の上昇が穿孔の誘因と思われ興味深かった.

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