日本臨床外科学会雑誌
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CDDPの腹腔内反復注入が奏効した悪性腹膜中皮腫の1例
堀川 直樹東山 考一坂本 隆塚田 一博
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キーワード: 悪性中皮腫, 腹膜
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2001 年 62 巻 12 号 p. 3054-3058

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抄録

今回われわれは, cisplatinを主体とした抗癌剤の腹腔内反復注入により,診断後2年余の生存を得た悪性腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.
症例は74歳,女性.右側腹部痛を主訴に受診し,原因不明の腹水貯留および胆嚢結石を指摘された.開腹手術を行ったところ,淡黄色透明な腹水を多量に認め,腸間膜,右横隔膜下,胆嚢漿膜面,大網など腹腔内の広い範囲に,白色米粒大の硬結が多数散在しており,その一部を切除生検した.術後,病理組織学的にびまん型悪性腹膜中皮腫(上皮型)と診断された.腹腔用リザーバーから, cisplatinを主体とする抗癌剤の腹腔内反復投与を開始し,腹水の増減, CA125の推移を効果の指標としつつ, 2年1カ月目に永眠するまで断続的に継続した.本症の予後は不良で平均生存期間は約1年とされており,自験例における同療法は予後の向上に寄与したと思われる.

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