抄録
子宮広間膜裂孔ヘルニアは稀な疾患であり,その術前診断は困難とされる.今回われわれは, CTが術前診断に有用であった1例を経験した.症例は49歳女性.腹痛,嘔吐を主訴に近医より紹介入院となった.開腹歴はなく,腹部は膨満し,圧痛を認めた. Blumberg's signと筋性防御は陽性で,聴診にて金属音を聴取した.腹部単純X線撮影ではニボーを伴う小腸ガスを認め,イレウス管を挿入したが,翌日も改善は認められなかった.腹部CTにおいて腹水と拡張した腸管によって左側に圧排された子宮を認めたため,本疾患による絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行した.手術所見では,回盲部より約60cm口側の約3cmにおよぶ回腸が右子宮広間膜にある約2cmの異常裂孔に嵌頓していた.嵌頓小腸を整復し,異常裂孔の単純閉鎖のみを行った.子宮広間膜裂孔ヘルニアは非常に稀で術前診断は困難とされてきたが, CT検査が診断の一助となる得ると思われた症例を経験したので報告する.