日本臨床外科学会雑誌
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波動式末梢循環促進装置を使用した腹腔鏡補助下大腸切除術後に発症した肺塞栓症の1例
吉田 達也長浜 雄志丸山 道生
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2001 年 62 巻 3 号 p. 643-648

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抄録

肺塞栓症(PE)は,腹腔鏡下手術導入当初から問題となり,対策についても論じられてきた.今回,術中両下肢に波動式末梢循環促進装置を装着したにもかかわらず術後PEを経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は, 69歳の男性. 2000年2月に早期大腸癌に対して内視鏡的粘膜切除術を行い,断端陽性のため,手術目的に7月3日に入院となった. 7月17日に気腹法で腹腔鏡補助下回盲部切除術を行った(気腹圧8mmHg, 気腹時間110分).術翌日の初回歩行時に急激な悪寒戦慄を訴え,低酸素血症を認めたため,肺塞栓症を強く疑い,ヘパリンナトリウムの投与を開始した.発症3日目の肺血流シンチグラフィーにて,肺塞栓症の確定診断となった.両下肢静脈造影上,深部静脈血栓症は認めなかった. 8日目からワルファリンカリウムを内服させ, 28日目の肺血流シンチグラフィーでPEの改善を確認し,退院となった.

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