抄録
60歳男性.発熱,気尿,糞尿を主訴とし,左下腹部に手拳大の腫瘤を触知した.注腸検査ではS状結腸で閉塞し,膀胱へ続く瘻孔は造影されなかった.大腸内視鏡検査では同部に隆起性の腫瘤を認め,組織生検で中分化型腺癌と診断された.膀胱鏡検査では,膀胱の左後壁側に瘻孔の開口部を認めた. S状結腸で閉塞しているにもかかわらず,イレウス症状を呈さずに経過した. S状結腸癌によるS状結腸膀胱瘻の診断で手術を施行した. S状結腸と膀胱が一塊となっており, S状結腸切除,膀胱全摘,両側尿管皮膚瘻造設術を施行した.病理組織では, S状結腸癌が壁外性に大きく発育し,膀胱に直接浸潤,瘻孔を形成していた.
S状結腸癌で膀胱に浸潤する症例はしばしば経験されるが, S状結腸膀胱瘻を形成することは比較的少ない.自験例は壁外性に大きく発育したために瘻孔を形成した稀な症例と考えられた.