抄録
症例は54歳,女性.くも膜下出血後の正常圧水頭症のためにventriculo-peritoneal shunt術(脳室腹腔短絡術:以下, V-P shunt術)を受けた.約8年後より腸閉塞症状を繰り返すようになり, 9年後V-P shunt tubeの一部が肛門より排泄された.腹部所見は特変を認めず,経過観察していたが,腸閉塞症状を繰り返すため精査.回腸直腸瘻を認め,保存的に経過観察するも軽快せず,さらに骨盤から右臀部にいたる膿瘍形成を認め,当科紹介となった.手術前日になり,膿瘍が背部にドレナージされ,背部から,便の排泄を認めた.手術は瘻孔切除後,直腸側は縫合閉鎖,回腸側は回盲部切除術を行った.術後,腹腔内膿瘍を合併し,ドレナージ術が必要であったが,それ以後は良好に経過し,現在,外来経過観察中である. V-P shunt tubeの消化管穿通症例の報告は散見されるが,内瘻形成および広範な腹腔内膿瘍を合併した症例は稀であり報告した.