2001 年 62 巻 5 号 p. 1207-1211
内ヘルニアの1つである盲腸窩ヘルニアは盲腸周囲の後腹膜窩にヘルニアを生じる極めて稀な疾患である.最近16年間に大垣市民病院外科にて,開腹術を施行した盲腸窩ヘルニアの4例につき文献的考察を加え報告する.自験例を含みこれまで本邦報告例は31例であるが,男女比1.4:1と男性にやや多い傾向をしめし,年齢は生後1カ月から86歳と幅ひろく分布し,平均年齢は46.9歳であった.盲腸窩ヘルニアは術前診断は困難だが絞扼性イレウスとなることがおおく,観血的整復を要するため,手術の時期を逸すると致命的となる.本邦報告例では2例が死亡しているだけであるが,欧米では75%と高い死亡率の報告例もある.本症の成因は盲腸,上行結腸の後腹膜への癒着不良,盲腸の下方への伸展による盲腸窩の拡大や盲腸窩に入り込んだ小腸が腹膜の伸展と共に進行し嵌頓すると考えられてはいるもののいまだ定説はない.