2002 年 63 巻 12 号 p. 2971-2975
側副血行路の存在より虚血性小腸炎は比較的稀とされている.今回, 3次にわたる手術を要した虚血性小腸炎を経験した.症例は82歳,女性で腹痛を主訴として来院した.腹痛が増強し, CTで認められた腹水が試験穿刺で血性であったため開腹術を施行した. 170cmにわたる小腸壊死を認め,壊死型虚血性小腸炎の診断で腸切除を施行した.さらに,初回手術後59日, 104日目にそれぞれ狭窄型虚血性大腸炎と狭窄型虚血性小腸炎による通過障害のため腸切除を施行した.両者ともに肉眼所見で全周性潰瘍と管状狭窄を認め,病理組織像での線維化を伴う潰瘍所見から狭窄型虚血性大腸炎・虚血性小腸炎と診断した.本例では僧房弁閉鎖不全症が認められ,血栓により3カ所に虚血性腸病変が発生し壊死と異時性に狭窄が顕性化したと考えられた.虚血性腸病変は通常単発であるが,小腸・大腸に複数カ所で虚血性腸病変が発生する可能性が示唆された.