抄録
肝切除術にて治癒しえた難治性肝膿瘍の1例を経験した.症例は糖尿病を有する69歳,男性,右側腹部痛を主訴に近医受診. US, CTで肝膿瘍,胆嚢結石症,膵石症と診断され, USガイド下肝膿瘍ドレナージを施行された.さらに胆嚢炎の併発を認め経皮経肝的胆嚢ドレナージ(PTGBD)施行.しかしPTGBDが経膿瘍的に挿入されたこともあり, DICと敗血症を併発したため当科へ転医となった.集中管理に加えて膿瘍腔の持続洗浄を施行したところ,敗血症, DICから離脱したものの,肝膿瘍は保存的治療に抵抗性であった.よって,初発より2カ月後に膿瘍を含めた肝S5亜区域切除術を施行した.術後経過は良好で,第16病日に転院した.
このように耐糖能異常を有するような症例では,創傷治癒が遅延することがある.感染巣が保存的加療に抵抗性を示した場合には,保存的療法に固執せず,適切な時期に外科的治療に踏み切る必要があると考えられた.