2002 年 63 巻 4 号 p. 1000-1004
胆嚢の形態的な先天性奇形である重複胆嚢は,非常に稀な疾患である.今回われわれは,術前の胆道造影にて確定診断しえた重複胆嚢1例を経験した.症例は69歳,女性.主訴は心窩部痛.術前のERCで,副胆嚢に胆石症を伴うBoyden分類Y型, Gross分類A型の重複胆嚢と診断された.副胆嚢の位置関係から肝・胆道損傷の危険があるため,開腹下に主・副両胆嚢摘出術を行った.本疾患の本邦報告例からは,胆嚢憩室,砂時計胆嚢などの類似疾患を除外し,確定診断を付けるためには胆道造影が不可欠であり,加えて副胆嚢には結石が高頻度にみられ,胆嚢癌が合併することも念頭に置く必要があると考えられた.また,胆嚢管の合流形態を把握し,安全な手術を行うためにも胆道造影は有用であると考えられた.一方,症例によっては,腹腔鏡下胆嚢摘出術も選択し得ると思われた.