2002 年 63 巻 4 号 p. 958-963
直腸癌多発肝転移(H3)に肝動注療法が著効し,その残存直腸に直腸癌が発生した1例を経験したので報告する.
症例は56歳,男性. 4年前直腸癌の診断で低位前方切除術を施行した.術後血清CEAの高値を認め,精査により肝転移を認めた.術後6カ月より5-FU: 500mg+CDDP: 10mg (1回/w)の肝動注療法を開始し, 11カ月間行った.血清CEA値は肝動注開始後3カ月で正常値になりその後再上昇は認めなかった.肝動注療法終了後,外側区域切除術,尾状葉部分切除術を施行した.切除した全ての肝臓には病理組織学的にviableな癌細胞を認めなかった.肝切除後14カ月間5'-DFURを投与し,再発を認めなかったため中止した.今回,肛門部痛と下血が出現し,残存直腸に直腸癌を認め,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織検査にて残存直腸に新たに発生した直腸癌と診断した.