日本臨床外科学会雑誌
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特発性小腸穿孔の1例
杉本 誠一郎萱野 公一宮崎 医津博西岡 聖内田 發三
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2003 年 64 巻 1 号 p. 107-110

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抄録

消化管穿孔の中で非外傷性小腸穿孔は比較的稀で,その原因も様々である.今回,われわれは稀な特発性小腸穿孔の1例を経験したので報告する.
症例は84歳,男性. 82歳時に胆嚢癌にて膵頭十二指腸切除術を施行された.腹部全体の圧痛・腹膜刺激症状を認め,胸部・腹部X線検査では腹腔内遊離ガス像,イレウス像を認めなかったが,腹部CTで腹腔内遊離ガス像を認めたため,汎発性腹膜炎と診断し緊急開腹術を施行した. Bauhin弁から約65cm口側に回腸穿孔を認め,回腸部分切除術を施行した.転移や再発を認めず,腹腔内の癒着やイレウスを認めなかった.組織学的にも粘膜,筋層,漿膜は断裂し,粘膜の漿膜側へのslidingを認めず,悪性所見や慢性の炎症所見を認めなかった.穿孔の原因を特定する所見はなく,特発性小腸穿孔と診断した.術後の経過は良好であったが,術後76日目に他病死した.

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