日本臨床外科学会雑誌
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多発性小腸横紋筋肉腫の1例
吉村 淳金村 哲宏柴地 隆宗吉川 高志
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2003 年 64 巻 1 号 p. 131-136

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抄録

症例は33歳の男性.腹痛の精査目的で入院となったが,入院後6日目に腹痛の増強のため緊急手術を行った.小腸に6つの腫瘤を認め,うち5つが鶏卵大~手拳大となって腸閉塞をきたし,腫瘤間の腸管は緊満していた.小腸切除を行ったが,手術創,肝,リンパ節などの腫瘍が急速に増大し,術後44日目に死亡した.摘出標本の肉眼形態は,隆起型,潰瘍限局型,びまん浸潤型など多彩な形態を呈した.病理組織所見では,異型度の強い大小不同の紡錘形細胞・円形細胞が粗に配列し,強い脈管浸襲と腫瘍壊死をともなっていた.免疫化学的染色では,ミオグロビンとデスミンが陽性であり,多発性小腸横紋筋肉腫と診断した.横紋筋肉腫は,頭頸部などに好発する軟部組織悪性腫瘍であり,消化管では原発性・転移性ともに極めて稀である.多発性で予後が極めて不良であったことから,本症例は潜在性の原発巣からの多発転移と推測されるが,その病態については不明である.

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