日本臨床外科学会雑誌
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胃原発悪性リンパ腫の化学療法中にサイトメガロウイルス感染により小腸穿孔を起こした1例
山田 豪末永 裕之桐山 幸三和田 応樹谷口 健次平井 敦
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2003 年 64 巻 1 号 p. 137-141

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抄録
サイトメガロウイルス(以下CMV)感染は免疫不全患者で起きやすいが,今回われわれは,悪性リンパ腫の化学療法中にCMV感染による消化管穿孔を起こした症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.腹部膨満の精査で胃原発性悪性リンパ腫と診断され,化学療法目的で入院.治療による効果を認めていたが,経過中に右下腹部痛が出現し,腹部CTにて穿孔性腹膜炎と判明.上部消化管内視鏡検査では明らかな穿孔部を認めず,小腸穿孔の診断で緊急手術を施行した.開腹すると,回腸末端に約5 mmの穿孔部を認め,さらにTreitz靱帯から約30cmの空腸は穿孔しかけていた.回盲部切除,空腸部分切除,ドレナージ術を施行した.病理組織検査所見よりCMV感染による穿孔と判明した.術後9日目に縫合不全をきたし,術後22日目に敗血症にて死亡された. CMV感染による消化管穿孔は極めて稀で,本邦で10例目であり,早期診断と早期治療の重要性が示唆された.
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