日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
胃癌の平均腫瘍径と予後からみた大動脈周囲リンパ節郭清の意義
高橋 滋井川 理松村 博臣宮田 圭悟藤井 宏二竹中 温
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 64 巻 1 号 p. 5-10

詳細
抄録
目的:新鮮切除標本の腫瘍平均径別に深達度,リンパ節転移状況と予後を検討し,腫瘍径が郭清の指標になりうるか検討した.対象と方法:京都第二赤十字病院で根治切除された初発胃癌899例を対象とした.新鮮切除標本における腫瘍径を計測し1cmきざみで分類し, D1からD3の郭清度別に予後をもとめ,おもに内腔からみた平均腫瘍径と深達度の面からリンパ節転移を検討し平均径と最適な郭清範囲の関連につき検討を加えた.結果: 1)腫瘍径が1cm以下の症例では全例が早期胃癌であった. 1~2cmの症例では85%が早期胃癌であった. 2cmから5cmまでは進行癌が34%から50%, 67%と1cmきざみに増加し, 5cm以上では80%をこえる頻度で進行癌であった. 2)腫瘍径3cm以下の胃癌では郭清度別に差はなかった.しかしこの群のうちt2以上の進行癌で予後をみるとD1郭清例では有意に不良であった.また4~5cmの進行胃癌ではD3郭清例の予後が良好であり, 5~8cmではD3郭清が有意に良好な結果であった. 8cm以上の症例ではいずれの郭清においても差はなく,その再発形式にあきらかな癌性腹膜炎が22.5%を占めていた.結語:腫瘍径3cm以下の胃癌でも進行癌の場合はD1郭清よりD2郭清を行うべきであり,また4~8cmの進行胃癌ではD3郭清の適応と考えられた.術前の腫瘍径の適切な計測が可能であれば腫瘍径は大動脈周囲リンパ節郭清の適応の指標となりうると考えられた.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top