抄録
胃癌術後の心嚢膜転移によって生じた心タンポナーデの2症例を経験したので報告する.胃癌の心嚢膜転移は稀ではあるが心タンポナーデを発症すると極めて重篤な病態となる.症例1は52歳,女性で術後22カ月目の腹腔内リンパ節再発後4カ月で心タンポナーデを発症した.症例2は68歳,男性で術後30カ月目の頸部・縦隔・腹部リンパ節再発後2カ月で心タンポナーデを発症した.心膜開窓術または心嚢膜穿刺を施行したが,心タンポナーデ発症より各々4, 1カ月後に死亡した.胃癌術後の心嚢膜転移は術後2年目以降の報告が多く,心タンポナーデという再発形式も念頭に置き診療に当たる必要があると共に,現時点ではQOLを重視した対症療法に心がけるべきであろう.