抄録
症例は27歳,女性.明らかな誘因のない左下腿疼痛および腫脹を主訴に入院となった.画像上,深部静脈血栓症および肺塞栓症と診断されたため,抗凝固療法に加え,一時的下大静脈フィルターの留置を行った.入院13日目の腹部DSAにて下大静脈フィルター内に明らかな血栓の捕捉ないことを確認後,フィルターを抜去した.以後重篤な合併症もなく軽快退院された.本症例は,プロテインS活性が著明に低下している以外に血栓症の誘因となるものはなく,プロテインS欠乏症による凝固異常症が原因と考えられた.さらに,若い女性の場合は将来の妊娠の可能性を見据え,下大静脈フィルターの適応とその種類を決める必要があり,抗凝固療法の中止時期さらには産婦人科医との緊密な連携を含めた長期の経過観察が必要と思われた.