抄録
腹腔内遊離ガスと紛らわしい像を認めた多発外傷気胸症例を経験した.交通外傷で救急搬送,初療時気胸や気腹は認めなかった.急性硬膜下血腫,脳挫傷,外傷性くも膜下出血による意識障害を認め,緊急開頭血腫除去術を施行.術後の胸部単純X線検査で右横隔膜下に腹腔内遊離ガス像が疑われ,腹部CTでも腹腔内遊離ガスと判断され緊急開腹術を施行したが,気腹も消化管穿孔も認められなかった.ショック状態の外傷症例など緊急時のCTでは,読影時間が制限され複数人数での検討もできないため, CT自体の虚像が確定診断へ導く危険にも注意すべきと思われた.気胸と腹腔内遊離ガス像との鑑別点としては,肝円索・肝鎌状靱帯が正常位置に確認できるかなどが重要と思われた.