抄録
症例は31歳,男性.主訴は腹痛,発熱,下痢.感染性腸炎を疑い,当院内科入院となった.入院5日目に腹部CT検査をしたところ,消化管穿孔による腹腔内膿瘍が疑われ,緊急手術を施行した.手術所見は,混濁した大量の腹水を認め,盲腸から下行結腸にかけて壊死性変化,多数の穿孔部位を認めた.壊死性変化,穿孔部位は盲腸が最も著明で,肛門側にいくにつれて軽減していた.壊死性変化を呈した腸管を切除した.術中所見でアメーバ性大腸炎を強く疑い,腹水のPAS染色にてアメーバ性大腸炎と確定診断した.術後,致命的な合併症は生じず救命しえた.アメーバ性大腸炎は輸入感染症,性行為感染症として最近年々増加しているが,その診断は容易ではない.腸管穿孔を伴う劇症型の症例では死亡率が高く,救命には早期診断,早期治療が必要であるが, PAS染色による腹水細胞診が早期診断に有用であった.