抄録
大腸MALTリンパ腫は報告例が少ない.われわれは, H. P.除菌で病変が消退したと考えられる直腸MALTリンパ腫の1例を経験した.症例は52歳,女性.排便時出血で近医受診.直腸MALTリンパ腫の診断で,当院紹介された.大腸内視鏡所見で直腸7時方向,歯状線から直腸Rb粘膜にかけて出血性変化を伴う潰瘍性病変を認めた.病理検査では,異型リンパ球のび漫性増殖と,腺管上皮へのlymphoepithelial lesion (LEL)を散見し,免疫染色で, B-cell系マーカーであるCD79αに優位に陽性を示し, B-cell MALTリンパ腫と診断した.十分なインフォームドコンセントのもと, 7日間のH. P.除菌療法を施行した.除菌後,大腸内視鏡検査で潰瘍性病変は消退し,病理検査でもGroup 1 proctitisの結果を得た. 6カ月経過時点で,無再発中である.