抄録
比較的稀な乳腺顆粒細胞腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は68歳,女性.左乳房腫瘤を自覚したため受診した.左乳房C領域に, 1×0.8cmの表面平滑,弾性硬,境界不明瞭の腫瘤を触知した.マンモグラフィ,超音波検査およびMRIでは悪性を疑った.穿刺吸引細胞診ではClass IIであった.後日,一部大胸筋に浸潤していた部位も含めて腫瘤摘出術を施行した.術中迅速病理診断では,組織型の確定は困難であったが良性腫瘍と診断され,手術を終了した.固定後の病理組織学的所見は胞体に好酸性の顆粒を有する大型の細胞が胞巣を形成し,大胸筋,脂肪組織に浸潤し,免疫組織学的にはS-100蛋白が陽性であった.以上より顆粒細胞腫と診断された.本疾患は理学所見,画像所見が乳癌に類似し,穿刺吸引細胞診,術中迅速診断でも診断は必ずしも容易ではないため,治療方針を決定する際注意が必要である.