2003 年 64 巻 3 号 p. 624-628
症例は55歳,男性.主訴は嚥下困難.食道胃透視,内視鏡検査にて食道癌(MtUt, 3型, 12cm長),胃癌(M, IIa+IIb, 3 cm大)と診断. CT検査にて食道癌の右肺浸潤が疑われT4と診断し,放射線(40Gy)化学療法(CDDP, 5'-DFUR)を施行した.終了2週目に発熱と,胸部X線にて右下葉肺炎を認めた.食道造影にて右下葉B6と膿瘍腔が造影され食道肺瘻と診断した. covered EMSを挿入し,肺炎の改善を図り, 19日後に手術を施行した.食道と右肺は固く癒着し,食道および右肺下葉を一塊として切除した.病理診断は,高分化扁平上皮癌, pT3, pN0, stage IIで,肺浸潤や瘻孔は明らかでなかった.食道気管支瘻を形成した食道癌に対するcovered EMS挿入は,肺炎の治療に有効であるとともに,術前処置としても有用な方法と考えられた.