日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
ヘルニア嚢腫瘍を契機に診断された胃癌術後腹膜再発の1例
齋藤 元伸関川 浩司安斉 圭一安藤 善郎竹之下 誠一
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 64 巻 3 号 p. 634-637

詳細
抄録

胃癌からのKrukenberg転移術後31カ月経過し,外鼠径ヘルニアを契機に診断された腹膜再発の1例を報告した.症例は46歳,女性. Krukenberg腫瘍摘出術後31カ月経過した2002年1月,ヘルニア根治術施行した.切除したヘルニア嚢の先端に黄白色大豆大の孤立結節を認め,病理学的検索にて胃癌の腹膜再発と診断した.本例ではその他の腹膜への多発結節もみられず,術後5カ月経過した現在もなお再発の兆候がないことより前回手術時に腹腔内遊離癌細胞がヘルニア嚢に着床し,そこで増殖したことが推察された.腹膜再発の診断は,腹水などの臨床症状を伴わない例,画像や腫瘍マーカーの変化がない例では困難な場合がある.その際には,極めて稀な腹膜転移形式の一つであるヘルニア嚢腫瘍の存在も常に念頭に入れ診察することが大切である.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top