抄録
症例は86歳,女性.自宅で倒れているところを発見され救急車で当院救急外来を受診した.来院時,肛門より暗赤色調の小腸脱出を認めたため,同日緊急手術を行った.腹腔内には腹水や糞便は認められず,腹膜翻転部直上の直腸前壁に約5cmの縦走裂孔を認めた.そこに回腸が入り込み肛門より脱出していた.脱出した回腸は壊死していたため切除し肛門側より摘出した後,直腸縫合閉鎖,回腸回腸端々吻合を行った.術後経過は良好で15日目に退院した.小腸脱出を伴った特発性直腸破裂は本邦ではこれまでに11例あり,極めて稀な疾患である.小腸脱出を伴った場合は糞便による腹腔内汚染が少なく比較的予後が良いため早期に発見し治療すれば救命しうる疾患である.本症例は広義の特発性直腸破裂であり,子宮脱が誘因の一つと推測された.