日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
憩室内に胆汁酸腸石を認めた十二指腸憩室穿孔の1例
井口 利仁吉岡 孝五味 慎也中井 肇折田 洋二郎
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 65 巻 6 号 p. 1563-1567

詳細
抄録

症例は70歳の女性.上腹部痛を主訴に当院内科に入院,腹膜刺激症状を認めたため外科に紹介された.腹部CT検査にて右腎上極近傍に後腹膜気腫像を認め,大腸憩室穿孔などを念頭におき緊急手術を施行した.十二指腸下行部後腹膜に膿瘍形成を認め,術中超音波検査にて膵頭部と十二指腸間に結石影を認めた. Kocher十二指腸授動術により,十二指腸下行部の穿孔を確認した.穿孔部に結石を触知し,十二指腸に小切開を加え内腔から憩室内結石であることを確認した.結石摘除後,憩室切除は行わず,穿孔部および十二指腸切開部を縫合閉鎖し,胆道減圧術および腹腔ドレナージ術を施行した.術後は一過性に胃前庭部の変形を認めたが経時的に改善した.結石はデオキシコール酸を主成分とする胆汁酸腸石であった.十二指腸憩室内結石例の本邦報告は9例を検索しえたが,成分記載のある胆汁酸腸石による穿孔例はなく,稀な症例と考えられたので文献的考察を加え報告する.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top