日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
癌との鑑別が困難であった十二指腸乳頭炎の1例
斉藤 琢巳稲垣 光裕小原 充裕石崎 彰紀野 修一葛西 眞一
著者情報
キーワード: 十二指腸乳頭炎
ジャーナル フリー

2004 年 65 巻 6 号 p. 1568-1573

詳細
抄録

症例は78歳の女性.上腹部痛と嘔吐を主訴に当院入院.腹部US・CTにて総胆管拡張と主膵管の軽度拡張を認めた. ERCPにて総胆管拡張と下部胆管の不整狭窄および主膵管開口部の狭窄所見を認めた. EUSでは乳頭部近傍に径約15mmの低エコー領域を認めた.同部の生検では悪性所見を認めなかった.乳頭炎などの良性疾患を否定できないが, EUS所見で乳頭部腫瘍を疑うこと,急性膵炎を起こしたことから切除目的に開腹術を施行した.術中胆道鏡検査にて下部胆管粘膜面の扁平隆起と血管増生を認め,腫瘍性病変と判断し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理所見では膵管周囲の線維化をともなう慢性乳頭炎で悪性所見はなかった.乳頭炎の胆管像は筆尖型,狭窄型,硬化型,結石型の4型に分類されており,本症例は狭窄型と思われた.癌との鑑別が困難であった十二指腸乳頭炎の1切除例を経験したので報告する.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top