2004 年 65 巻 6 号 p. 1574-1577
症例は68歳男性で,胃癌に対する幽門側胃切除術後,腸閉塞症を繰り返すため小腸癒着剥離術を施行し,減圧とステント目的でイレウス管を挿入した.術後空腸上部まで引き抜いたイレウス管からの排液が減らないため,イレウス管造影を行ったところ,空腸がトライツ靱帯から約15cm肛門側で完全に閉塞しており,再手術を施行した.その結果同部に順行性三筒性小腸腸重積症が認められた.腸重積症を起こしても腸閉塞の口側の腸管は拡張弛緩しており,嵌入部より口側の腸管がイレウス管で減圧されている場合には,嵌入腸管が虚血に陥らず,腹痛,下血などの特有な症状が認められないことがある.イレウス管を使用しているにも拘わらず,通過障害が遷延する場合には,たとえ腹痛,下血などの症状が出現しなくても腸重積症の合併も念頭におく必要があると考える.