日本臨床外科学会雑誌
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超音波検査にて診断した特発性胆嚢穿孔の1例
渡辺 誠高村 光一後藤 学角田 明良草野 満夫
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1646-1649

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抄録

症例は69歳,女性.心窩部痛を主訴に当院を受診した.急性膵炎の診断で内科にて加療され,軽快したが再び心窩部痛が出現した.この際に施行した腹部超音波検査にて胆嚢壁の欠損と,胆嚢内外での腹水の移動が認められたことから胆嚢穿孔と診断され外科転科となった.反跳痛,筋性防御はなく,血液検査所見上も炎症反応は軽度であったため,待期的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.非医原性で胆石は認めず,急性胆嚢炎像を伴わなかったため,特発性胆嚢穿孔と診断した.発生の機序として,病理組織学的に穿孔部周囲の細血管内に微小血栓が認められたことより,微小血栓による虚血に起因した胆嚢壁の循環障害が考えられた.術前画像所見にて胆嚢穿孔と診断しえた例は少ない.本症例は腹部超音波検査にて胆嚢壁の欠損部が描出され,胆嚢穿孔と術前診断しえた極めて稀で貴重な症例と考えられた.

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