日本臨床外科学会雑誌
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特発性大網出血の1例
松岡 翼米満 隼臣
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1676-1680

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抄録

症例は30歳,男性.上腹部痛を主訴に当院を受診した.理学所見上急性腹症の診断であったが単純X線写真上腹腔内遊離ガス像を認めず,腹部CTにても少量の腹水がみられるのみであったため,同日より入院,点滴加療を開始した.翌日のCTで腹水の増量が認められ,腹腔穿刺で穿刺液が血性であったため,腹腔内出血の診断にて緊急手術を施行した.開腹すると,胃体中部近傍の大網に数カ所の断裂を認め,同部に小血腫の形成がみられた.実質臓器,腸間膜に出血を認めなかった為,その部の大網を切除した.外傷の既往がなく,病理検索でも非特異的炎症のみの診断であったため,特発性大網出血と診断した.大網出血の診断は非常に困難とされる.自験例および文献的考察から,腹腔内臓器や腸間膜に異常のみられない腹腔内出血を認めた場合,本症も鑑別診断の1つに加えるべきと思われた.

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