日本臨床外科学会雑誌
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腹部放線菌症の1例
重松 千普高橋 知秀近藤 俊彦
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キーワード: 大腸放線菌症, 放線菌
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1685-1688

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抄録

われわれは虫垂周囲膿瘍の術前診断にて治療した腹部放線菌症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は48歳男性,平成13年に右下腹部痛を認め,他院で入院加療.平成15年10月右下腹部痛持続し,当科を受診された.触診上,右下腹部に腫瘤を触知し,腹部CT検査で膿瘍形成および周囲にバリウムの散在を認めた.手術時の肉眼所見は,虫垂は萎縮し,硬結として触知,その先端は回腸末端と固着瘻孔化し,周囲にはバリウム塊が散布され,膿瘍化していた.手術は,虫垂切除,虫垂回腸瘻を切除し,膿瘍ドレナージを施行した.切除標本の病理組織学的検索にて膿瘍のバリウム塊周囲には放線菌塊を認め,腹部放線菌症と診断した.術後経過は良好で現在,再発なく外来通院にて経過観察している.慢性の経過をとる腹腔内膿瘍を認めた場合,本疾患も念頭におくべきであると考えられる.

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