日本臨床外科学会雑誌
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術中高血圧をきたした後腹膜パラガングリオーマの1例
高川 亮大島 貴羽鳥 慎祐國崎 主税池 秀之今田 敏夫上條 聖子
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1695-1700

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抄録

45歳,男性.人間ドックの腹部エコー検査にて後腹膜の腫瘤を指摘され,当院を受診した.血液生化学検査では血中ノルアドレナリンとドーパミンの上昇を認めた. CTでは大動脈の左側,膵臓下縁に接する様に径約4cm大の腫瘤が認められ,膵由来の腫瘍が疑われたが,造影MRIで膵との境界が確認され否定的となった.血管造影では第12肋間動脈・第1腰動脈で腫瘍濃染像を認めた.以上の諸検査所見から神経原性腫瘍を最も強く疑い,手術を施行した.術中に著明な血圧の上昇を認め,一時手術を中断したが,降圧剤で対応し,腫瘍を摘出しえた.摘出標本は径3.8cm大の球形で線維性被膜を有し,割面は嚢胞状で一部充実性であった.病理組織学的所見では,腫瘍細胞が胞巣状に増殖しており,クロモグラニンAが陽性で, S-100陽性の特徴的な支持細胞が確認されることよりパラガングリオーマと診断した.良悪性の診断では, Ki-67陽性細胞が10%以下であることより良性と診断した.後腹膜パラガングリオーマは比較的稀な疾患であり文献的考察を加えて報告する.

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