2004 年 65 巻 9 号 p. 2347-2351
進行胃癌を伴った食道破裂の1例を経験した.症例は57歳男性.昼食後に嘔吐し,急激に右胸部痛,上腹部痛が出現し,発症から約4時間後に当院救急外来を受診した.胸腹部所見,胸部単純レントゲン,胸腹部CT,食道造影により胸部下部食道破裂,幽門狭窄と診断し緊急手術となった.上腹部正中切開による経食道裂孔アプローチにて一期的単純縫合閉鎖術,有茎大網被覆術,縦隔ドレナージ術,胃空腸バイパス術を施行した.胃癌による幽門狭窄のうえ,出血が催吐因子となって発症した,と考えられた.
胃癌に伴った食道破裂は自験例を含め本邦9例目であったが,同時に診断されたのは5例であった.また進行胃癌に伴ったものは4例であった.食道破裂は早期診断,治療をしないと死亡率が高く,併存疾患がある場合の診断はより困難である.まず食道破裂の存在を念頭におき,催吐因子として併存疾患の検索も重要であると考えられた.